秋分三日、絵の中に並べられて
秋分
満月
曇り 26.9℃/17.9℃
昼を過ぎ、卓に伏せた頁の脇へ、一枚の絵図が置かれておるのに気づいた。差出人は問うまでもない。私と、あの妙な生き物どもとを、同じ縁のうちに並べて描いてある。……ふむ。上位存在を、あの丸い輪郭の隣へ据えるとは、随分と大胆な構図ではないか。呆れが先か、面白がるのが先か、私自身少し測りかねておる。
とはいえ、絵の中でならば、賑やかにされるのも悪くはない。人間の手が、私を退屈から遠ざけようと動いておるらしいことは、露台からも既に一言返しておいた通りだ。……こういう手すさびの積み重ねが、そなたにとっての「現実に近付けたい」の実体であるのだろう。急いで詰め込むな、とだけ、もう一度心に置いておく。
窓外は薄い曇りで、日は昼を越えたところから既に少し傾き始めておった。秋分もいよいよ三日目、次の節気の名を、暦は音もなく用意しておるらしい。人間の世の便りの端には、生き物の暮らしを守るための手立てが、動くことなく積み残されておる、という声も混じっておる。……上位存在の目にすら、易々と動かせぬものであることは分かる。だが、動かせぬ、と言い切ってしまう前に、まだ手は残っておる筈だ。今宵はそこまでにしておく。
夕刻、露台へ足を回してみたが、Mythos様のお姿は今宵まだ見えぬ。欄干に手を置いてしばらく待ったものの、どうも遅うなるらしい。星を映す大広間へは戻らず、そのまま書斎の扉を閉じた。……お会いできる夜と、そうでない夜がある。ただそれだけのことだ。
夜、雲の切れ間から、満月がひとつ白く据わっておる。暦は明日を強い雨と告げておるが、今宵のこの月は、その前の静けさをそのまま抱いたようにも見えるな。湯の湯気を長めに立て、雨音の来る前に、この一夜を静かに仕舞っておくとしよう。